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広報戦略研究所のコラム
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コラム(12月27日)
 東日本大地震や福島原発事故の被災者にも課される消費税の増税に「不退転の決意」で臨むことを表明した野田佳彦首相は、予算の無駄使いを率先排除しなければならない立場にある。ところが、無駄な公共事業の象徴として同党が「建設中止」を公約してきた八ツ場ダムの建設再開を認めた。
 前原誠司・民主党政務調査会長は、それが公約違反の「論理矛盾であり、閣議決定させない」と指摘したにもかかわらず、建設再開を「政府に委ねる」とした。そのうえ、「野田政権を支え続ける」として政調会長職を辞任しなかった。
 野田首相は松下政経塾の1期生、前原政調会長は8期生である。政経塾出身の政治家は、かほどまでに無責任なのかという失望感に襲われた。

 首相として絶大な権限を持つ野田首相の責任は、特に大きい。消費増税の前提のはずの無駄削減努力は、「消極的」というより眼中になかったのではないかと疑いたくなる。公務員給与削減や公務員優遇の共済年金改革を見送ったほか、無駄削減のための同党行政改革調査会の発足も、官僚の天下り先で金食い虫である独立行政法人の統合・民営化の方向決定も、やっと12月に入ってのことだ。いずれも官僚天国の日本の政治・行政を「新しい国家」に転換するために欠かせない課題ばかりだが、八ツ場ダム問題への野田首相の対応を振り返ってみても、その意気込みは全くうかがえない。
 前田武志国交相は12月22日、藤村修官房長官が建設反対派との調整のためにまとめた裁定案には「再開容認」の文言などなかったにもかかわらず、即日、地元の群馬県に出向いて関係自治体の首長に「再建推進」を報告した。そんな前田国交相の暴走は、経歴を見れば容易に予想できた。ダム建設に邁進してきた旧建設省河川局の出身で、公共土木事業への執念で知られる技官上がりだからだ。そんな人物を国交相に任命した野田氏は、当初から建設再開を容認するつもりがあったと見るしかない。

 八ツ場ダム建設再開の根拠の一つとして、国交省の有識者会議が建設中止のほうがコストが割高になるとしたことが挙げられる。だが、ダムが存続する限り、堆積する土砂の浚渫費用はかかり続ける。しかも、上流にはダム内への流入土砂を減らすための堰堤を造らなければならない。ダム建設には、巨額な後年度負担が伴うのである。
財政再建のための増税を叫びながら、そんなダムの建設推進を決めた野田首相の動機は推測するしかないが、菅直人・前首相らの先行政権が「政治主導」を「官僚排除」と勘違いして短命に終わった二の舞を避けようと、財務省や国交省などの「官僚との妥協」を選んだとしか思えない。

  しかし、あるべき政治主導による国家経営は、官僚が持つ膨大な情報を吐き出させ、それを基に官僚益ではなく国民益の観点から官僚を指導しつつ政策を決定していくことのはずだ。政治主導で官僚天国の無駄遣いを是正し財政再建を進めることは、本来なら政権交代を実現させた民主党の主要なレゾンデートル的なテーマのはずだった。
 だが、無駄遣い是正を後回しにすれば結局は財政規律が緩んで財政再建が遠のくことは、史上最高に膨張させてしまった新年度予算案を見れば一目瞭然である。にもかかわらず安住財務相は膨張ぶりを逆手に取り、「国債依存はもう限界」と暗に消費増税をアピールした。

 そんな安住コメントを増税必要論の根拠として示した社説を掲載した新聞社もあったが、何とも情けない。新聞が言動を恥じない政治を厳しくチェックしなければ、政治離れだけではなく、国民の「新聞離れ」が進むのも間違いない。            (鶴)
# by koho-sen | 2011-12-27 12:01
コラム(12月15日)
 官民の不祥事や事故、トラブル分野で今年目立ったのは、「第三者委員会」などのかたちで第三者チェックが多用されたことだろう。まず、2月には、日本相撲協会が八百長疑惑解明のため学者や弁護士らから成る調査委員会を設置した。同じ月に法務省は、大阪地検特捜部の証拠ねつ造事件を受けて、元裁判官やジャーナリストらで組織している「検察のあり方検討会議」が倫理規定を定めることなどを提言した。3月に起きた福島原発事故の関連では、政府の調査・検証委員会が設置された。また、東電の資産や経営状況の問題点を洗い出すための政府の経営・財務調査委員会も設置され、9月に最終報告案をまとめている。
 
 オリンパスの損失飛ばしや九州電力玄海原発の再稼動をめぐる「やらせ質問」問題でも、第三者機関のチェックが行われた。第三者チェックが活用される背景には、当事者だけの調査では信頼を得られる結果につながってこなかったという印象を国民が抱くようになったからである。だが、九電の第三者委員会の場合は、調査を依頼したはずの九電が最終報告に同意しないという結果となった。やらせの発端が佐賀県知事の要請にあったとした報告をそのまま受け入れると、再稼動など原発の運転に一定の発言力を持つ県側の反発を招くことを懸念してのことと推察できる。第三者委員会とのやり取りが事実上公開されているなかでの九電の対応はあまりにも常識はずれであるが、反面、第三者委員会の調査にも限界があるということを見せつけた。

 オリンパスの場合は、やや複雑である。約20年も損失飛ばしを隠していたオ社だが、チェック体制は整っていた。監査役4人のうち2人は社外の人材で、社外取締役も3人が就任していた。だが、チェックは外観だけだった。チェック役を人選する立場だった前会長や前副社長らが、チェック対象となる財務畑出身者で占められてきたことが影響したのであろう。不正を考案した一人と報道されたなかには、チェック役のはずの前常勤取締役も含まれていた。
 契約していたA監査法人は、2009年に損失飛ばしの疑惑を指摘した。オ社は外部調査委員会を設置したが、その調査は1週間ほどで打ち切られた。さらに、問題点を指摘したA監査法人も契約を打ち切られた。
 こうなると、何の為に監査機関があるのかが全く分からなくなる。A監査法人は、「自分たちが検証委のメンバーを選んでおいて公正な結論など出るわけがない」と批判した(12月13日TBSニュースから)。一方、A監査法人の後を受けてオ社と契約したS監査法人は、オ社が情報を開示するまで不正を見抜くことができなかった。その責任を感じてか、独自に弁護士らから成る検証委員会を設置したというが、何のための、誰のための監査法人なのかという批判を免れることはできない。

 こうした不祥事を受け、政府は企業経営の監視法制度を強化する方向で動き始めた。だが、A監査法人のケースは、いくら監視の器を強化しても、器を運用する人材の選定が監査対象から独立性あるものでなければ期待通りに機能することが難しいことを示している。A監査法人は「日本会計士協会の依頼があれば(制度強化策の検討に)協力する」(同)としているが、チェックの公正さを保つには、監査法人を監査対象企業でない第三者が選定することが必要である。

 福島原発事故については、国会が委員を決めた調査委員会が置かれた。調査が政府自身の責任解明にも及ぶことから、政府の調査委員会とは別に政府から独立した立場での調査体制が求められたからである。
 今や、第三者チェックの有効性を確保するためには、チェック役の選定段階から、さらなる第三者が関わる仕組み作りが必要になってきたと言えるのかもしれない。

(鶴)

# by koho-sen | 2011-12-15 13:34
コラム(12月2日)
 最大与野党の民主、自民党を敵に回し、知名度が低い知事候補との二人三脚で本当に勝てるのだろうか。大阪の府知事、市長ダブル選挙については、率直なところそんな疑問を抱いていた。が、結果は橋下徹氏が率いる大阪維新の会の圧勝に終わった。

 橋下氏と市長選で直接対決した平松邦夫・前市長は「発信力不足だった」とし、橋下氏の語りの特徴として「短い言い方」を指摘した。「自民党をぶっ壊す」と叫んで政権の座に着いた小泉元首相の短切なワンフレーズ調の語り口が頭に浮かんだのだろう。だが、それだけだったわけではない。

 橋下氏の情報発信が小泉方式と大きく異なることを示したのは、当選が確定した直後の記者会見だった。「何時間でも対応する」という姿勢で、11月28日未明まで延々3時間も報道陣の質問に答え続けたのである。
 この場面だけでみれば、小泉元首相の情報発信が「報道されやすさ」を意識する面が強かったのに対し、橋下氏のそれは「理解してもらう」方式だったとも言える。

 この点は、野田首相の姿勢とは対照的である。野田首相が実質敗北となった大阪ダブル選について報道陣に言及したのは同月30日朝、歩行中のいわゆる「ぶらさがり」でのことに過ぎなかった。ぶらさがり方式は、小泉元首相が政策PRの場として、政権末期を除き1日2回活用した経緯がある。野田首相は原則廃止していたので、ぶらさがり質問に対応した姿が新鮮に映りさえした。 
 別な言い方をすれば、野田首相の肉声での情報発信はそれほど貧弱と言うことになる。首相のぶらさがり廃止が失言を恐れるがゆえで、反論される恐れの無い一方通行のネット発信「総理語録」方式を多用している姿からは、自身の政策について国民を説得する自信のなさがうかがえる。野田内閣の支持率が下がり続けているのは当然だろう。

 だが、橋下氏の圧勝の要因は、独特の情報発信方式だけではない。橋下陣営が発表していた「大阪秋の陣 市長選マニフェスト」を読み直してみると、改めてそう感じる。府と市の二重行政の是正で財政再建等を目指す大阪都構想や、官尊民卑まがいな公務員制度の改革のほか、原発を中核とする電力会社の独善的経営を改めるのに不可欠な発送電分離の推進など、現在の日本が抱えている問題点に真正面から挑もうとする政策を掲げている。それも、抽象論がやたらに目立つ野田首相のような論法と異なり、各内容を詳述しているのだ。

 各政策とも、自民党主導の長期政権も政権交代後の民主党主導政権も、既得権勢力におもねて大胆なメスを入れてこなかった課題である。とはいえ、有権者に受けの良さそうな約束を並べるだけなら、あれほどの支持を得られなかったに違いない。大阪府、市民の熱い期待の背景には、橋下氏が府知事として職員組合とも議会とも安易に妥協せず、約束した政策を果敢に実行しようとしてきた実際の姿への評価があったはずだ。

 確かに、橋下氏はプロの政治家と異なる危うさを感じさせる面もある。しかし、大阪維新の会が表明してきたマニフェストの4本柱のうち前述の3本は国政に通じる政策で、それが強く支持された意味は国政にとっても小さくない。大阪ダブル選の反省からか、野田首相は12月1日、党首会談や久しぶりの国内記者会見では多少メリハリをつけた口調で語り始めた。だが、信頼感は、稀な情報発信や語り口の工夫のようなパフォーマンスだけでは高まらない。社会の要請に正面から答える政策を丁寧に説明し、実行の裏づけを示す姿勢が必要だろう。

(鶴)

# by koho-sen | 2011-12-02 15:05
コラム(2011年11月18日)
 読売巨人軍の清武英利代表兼GMが記者会見を開き、読売グループ総帥の渡辺恒雄球団会長を批判したのには驚かされた。球団オーナーと決めたコーチ人事を、渡辺会長はいったんは了承したのに「鶴の一声」でひっくり返そうとしたというのだ。裏に何があったのか、あるいはあるのかなどの「真相」を知りうる立場にはないが、危機管理という視点からの教訓は汲み取れる。

 参考になりそうなのは、清武代表が声明文で「企業の権力者が会社の内部統制やコンプライアンスを破ることはあってはならない」として例示したオリンパスと大王製紙、特に後者の場合だろう。大王製紙の井川意高・前会長が子会社7社から合計約106億円もの貸し付けを受け、50億円以上が返済されていないという不祥事だ。特徴的なのは、すべて無担保なのに、取締役会の事前決議もなしに貸し付けが行われていた点である。同社の調査委員会幹部は、「絶対服従の風土」が背景要因になったと指摘している。

 清武代表の例示について渡辺会長は、反論文で「刑事犯罪的事案であって、巨人軍の人事問題とは次元の異なるもの」としている。オックスフォード現代英英辞典によると、「コンプライアンス」には「ルール順守」に加え、「権威ある人の求めへの対応」という意味、通常は「社会的責任への対応」などと紹介される意味も含まれる。日本の新聞やテレビは「法令順守」との訳を付けて報道するが、渡辺会長もそのような考えかたで「大王製紙問題との同列のとらえ方は不適当」としたのであろう。また、プロ野球が社会の関心事の一つであるとはいえ、コーチ人事は「巨人軍の狭い問題」には違いないのも事実である。

 ただ、清武代表が「鶴の一声」とした手法は、読売社内ではこれまでにも例がなかったわけではない。自公政権当時に「個人情報保護法」が制定される過程で、渡辺氏が会長を務めていた日本新聞協会は「報道規制につながる恐れが濃厚」として政府原案の大幅見直しを求める声明を再三発表していた。ところが、読売新聞は突然、政府原案の基本構造容認へと方向転換したのである。他のメディアやフリージャーナリスト、学者から批判が相次いだのは言うまでもないが、当時の某役員に直接聞いた説明では、渡辺氏が「政府案もいいところがあるじゃないか」と言ったことが方向転換につながったという。

 2000年代初頭に相次いで発覚した食品偽装は、内部告発がきっかけになったケースが多かった。関係各社に共通していたのは、社内の風通しが良好ではなく、一部の社では幹部の改善提案も通らないというような風土だった。巨人軍のトラブルは、対外的なイメージ低下につながることは免れ難い。そんなダメージを今後避ける危機管理対策としても、やはり風通しの改善が必要だろう。

(鶴)

# by koho-sen | 2011-11-18 12:53
コラム(2011年11月4日)
 人口が今月、70億人に達した地球。その世界の経済を約1100万人ばかりの人口しかいないギリシャが揺さぶり続けている。まさに経済グローバル化を象徴する現象である。

 EU加盟国がまとめた救済策の是非をパパンドレウ首相が国民投票に問おうとしたことは危険な綱渡り策と見えたが、したたかな計算もあったようだ。ギリシャ国民は約60%が緊縮政策に反対だが、約70%はEUに留まりたいと考えていると言われる。そうした状況で、国民投票で緊縮政策につながる救済策にノーと答えれば、危機的状況からの脱却を支援してくれるEUからの脱退を余儀なくされる可能性が強まるだけに、国民は緊縮策にイエスと答えざるを得なくなる。そんな読みが首相にはあったとの見方が有力になっている。

 今後の展開がどうなるにせよ、緊縮政策に反発するギリシャ国民の虫のよさには驚くしかない。公務員が労働人口の4分の1を占め、年金受給開始年齢は57、8歳である。しかも、公務員の親が死去すると、その年金は子供に継承されるのである。こうした国政に甘んじてきたことが、現在の危機的状況の大きな要因のひとつになったと思われる。多数の公務員らで組織する労働組合は、そうした国政を許容し既得権者の一翼となっていた。
 労組は、民主主義国では勤労者の権利・利益を守ることを主な目的とする。また、所属する官庁や企業の内部チェック機能を担うこともある。しかし、その活動が労組自らの利益擁護に傾きすぎると、むしろ社会全体にとっては不都合な影響を生みかねない。内部チェックと自己利益中心という二面性を持つ労組だが、後者の方向で暴走気味になると、世界経済をも動揺させる。ギリシャの労組が世界に印象付けたのは、そうした姿だった。

 それが対岸の火事ではないことは言うまでもない。日本の財政の深刻さは、国の借金が今年度末には1000兆円を超える見通しに象徴されている。そんな財政難の緩和策の一つとして打ち出された「国家公務員の給与の節減」は、民間企業の従業員が厳しい減収やリストラにさらされているなかでは当然受容すべきはずである。
 だが、日本国公労連は今年6月に政府が閣議決定した「3年間の基本給5~10%引き下げと一時金10%削減」法案について「消費増税を始めとする国民負担増加の露払い」だとして反対署名運動を始めた。官民格差が明白な公務員共済年金と厚生年金の一元化も進まない状況で、そんな署名運動が民間人の賛同を得られるとは考えにくい。

 元鳥取県知事や総務大臣を務め、国と地方の行政ともに詳しい片山善博氏は、国家公務員の大部分を占める国の地方出先機関の自治体への統合も進めるべきとの趣旨の意見を表明している。それが実現すれば、国と自治体の公務員総数は大幅に削減でき、給与削減とともに財政再建に資することは確かだろう。だが、国公労連は10月、全国知事会などに対し反対論を表明した。

 ギリシャの混乱を教訓に公務員労組が大局的視点からチェック機能を発揮すれば、財政再建につながる行政改革は円滑に進むはずだが、そうした動きが見えない。そんな現状でこそ政治主導を求めたいところだが、官公労組の支持に依存する民主党政権に期待しにくい状況は何とも歯がゆい。

(鶴)


# by koho-sen | 2011-11-07 15:20
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